著作者人格権と「ひこにゃん事件」

こんにちは。ブランシェ国際知的財産事務所の弁理士 鈴木徳子です。

昨日の記事に続いて、今日は著作者人格権が問題となった「ひこにゃん事件」について考えてみましょう。

ひこにゃん事件は、商標権問題や翻案権帰属の解釈問題なども含む非常に複雑な事件ですが、ここでは著作人格権に焦点をあてます。

 

ひこにゃん事件は、簡単に説明しますと、2007年に滋賀県彦根市で開催された国宝・彦根城築城400年祭のために、400年祭実行員会(実行委員会)が公募したイメージキャラクター「ひこにゃん」をめぐって、原作者が彦根市と実行委員会に対し、キャラクターの使用中止を求める民事調停の申立を行ったというものです。

争いの原因は、著作権(著作財産権)と著作者人格権の相違がきちんと理解されていなかったということに尽きると思います。

キャラクターの募集要項では「キャラクターの一切の著作権は実行委員会に帰属する」「キャラクターは同委員会が許可した団体等のホームページや出版物、PR用ツール等に対して自由に使用する」と規定されていました。

実行委員会は、市内外の業者にひこにゃんの商品化許諾をしましたが、利用できるデザインなどについて制限を設けなかったため、ひこにゃんに類似するデザインや、あるはずのないしっぽをつけたぬいぐるみなどの立体商品なども市場に出回ることになりました。

実行委員会としては、原作者から著作権を譲渡されたので問題はないと考えていたのでしょう。しかし、著作権は実行委員会に譲渡されたとしても、著作者人格権は譲渡できませんので、原作者に帰属します。そこで、意に反する改変が行われたとして、原作者が著作者人格権の侵害を主張したというものです。

あるはずのないしっぽまでつけられたら原作者が憤慨するのも無理はないと思います。原作者の名誉を尊重すべきだったのでしょう。

今日は以上です。

ひこにゃん※画像引用先:特許電子図書館

彦根市の登録商標です(登録番号第5104692号)

 

 

 

この記事を書いた人

鈴木 徳子