餃子屋の(商標の)先使用権が認められた事件ー2

 

こんにちは。ブランシェ国際知的財産事務所の弁理士 鈴木徳子です。

今日は昨日の記事の続きです。

 

先使用権が認められるためには、商標権者である相手の商標出願時に、自社の使用している商標が需要者の間で広く認識されていること、すなわち周知であるということを立証する必要があります。

本件では、被告の商標「ケンちゃんギョーザ」の出願日は平成8年12月6日ですから、その時点で原告であるケンちゃん餃子株式会社の標章「ケンちゃん餃子」他が周知であることを証明する必要がありました。

 

裁判では、原告のウエブ(http://www.ken-chan.co.jp/company.html) に記載されている「会社沿革」の内容に沿って、原告の各標章の使用状況が立証されています。具体的には、原告商品の製造販売の開始(標章の使用開始)、販売実績(地域、売上額など)、製造の規模(工場の内容)、原告の各標章の使用実績、ラジオCMなどの宣伝活動(期間、地域、内容等)、などを裏付ける証拠資料が提出されています。

その結果、原告の各標章が関東及び甲信越地方の1都11県を中心に周知であったと判断されて、これらの地域における先使用権が肯定されました。

 

以上のとおり、周知性の立証には多くの証拠資料を提出する必要があり、困難を伴います。本件では、被告商標の出願日は平成8年12月6日であり、10年以上前の時点における周知性を立証する必要がありました。10年以上前にさかのぼって、資料を収集する必要があったわけですから、大変な作業だったのではないでしょうか。

周知の立証が困難であり、先使用権が認められることは少ないと考えた方がよいです。やはり、はじめから商標出願をして権利を取っておくのが間違いないと思います。

 

今日は以上です。

 

この記事を書いた人

鈴木 徳子