商標の構成要素に識別力のない部分を含んだ場合を検討する

 

こんにちは。ブランシェ国際知的財産事務所の弁理士 鈴木徳子です。

最近、普通名称化の話題が続いていますが、これに関連する興味深い案件(異議2013-900056)がありましたのでご紹介します。

 

下の画像の商標は第3類「化粧品,せっけん類,香料,つけづめ,つけまつ毛,化粧用コットン」を指定して登録されたものですが(登録第5538659号)、これが先行商標「Hand & Nail Harmony」(標準文字)に類似するとして、商標法4条1項11号に基づく異議申立てがされました。

ちなみに先行商標も、第3類「スキンケア用のせっけん類,スキンケア用化粧品,肌用香料類,ネイルケア用化粧品,つけづめ,・・・,etc.」を指定しています。

HAND&NAIL

異議申立て理由は、

本件商標の文字部分の「HAND & NAIL」と先行商標「Hand & Nail Harmony」を比較すると、「ハンドアンドネイル」の称呼と、「手と爪」という観念が類似しており、互いに類似する商標である、というものでした。

 

特許庁は、本件商標の「HAND & NAIL」の部分が、指定商品との関係で、「手と爪用の商品」であることを表した商品の品質、用途表示であり、自他商品の識別標識として取引に資されるということはできない、と判断しています。

あくまで、図形部分とまとまりよく一体に表された構成全体をもって、識別機能を発揮するということです。

 

したがって、関係のない第三者が商品「つけづめ」に「HAND&NAIL」という表示を付して販売したとしても、「つけづめ」の品質・用途表示にすぎず本件商標の権利侵害とはならないと考えられます。

 

ちなみに、米国やシンガポールなど、海外ではディスクレーム(権利不要求)制度を採用している国が結構あります。

ディスクレーム制度とは、商標の構成要素中に識別力がない部分が含まれているときに、識別力が ない部分を他人が使用しても独占権を主張しないことを条件に登録が認められるという制度です。

 

日本には現在この制度はありません。

本件商標を例に挙げると、「HAND&NAIL」の部分について権利不要求をしておけば、権利範囲が明確になり、無用の争いも回避できるかもしれません。

しかし、日本は大正10年法では、権利不要求制度を採用していましたが、昭和34年法で廃止したという経緯もあり、さらに審査促進の妨げになるなど不要論も多いようです。

今日は以上です。

 

 

 

この記事を書いた人

鈴木 徳子