商標の精神拒絶、どういう判断基準なのかイマイチ不明確です

こんにちは。ブランシェ国際知的財産事務所の弁理士 鈴木徳子です。

商標の審査では、自分が所有する商標権と同一商標で同一の商品・役務を指定した(後願の)出願をした場合は、商標法制度の趣旨に反するという理由で拒絶されます。これを精神拒絶といいます。

 

精神拒絶は、商標法上規定があるわけではなく、あくまで審査の運用として、審査基準に記載されているものです。

指定商品・役務の同一といっても、①後願と先願の指定商品・役務が完全に一致する場合、②後願が先願の指定商品・役務を含む場合、③後願が先願の指定商品・役務の下位概念の場合など、

パターンがありますが、どのパターンを指しているのか明確ではありません。

 

最近の審決では、②のパターンに該当する後願が「商標法制定の趣旨に反する」という理由で拒絶された事案がありました(不服2013-3941)。

出願人は拒絶査定不服審判を請求し、最終的には原査定(拒絶査定)は取り消されています。

 

当審の判断の一部をご紹介すると、次のようなものでした。

「企業は新しい商品等について既存の商品等に使用する商標と同一の商標を使用する場合は、当該商標について新たに使用する商品等に更に商標登録を受けることが必要となり・・・新商品が商品化される毎に、その商品等が属する区分について既存の商標登録とは別に登録を受けなければならなくなる。・・・このような場合に、既存の商標登録と指定商品等が重複する商標を登録することができないとすると、企業等はその商標及び指定商品等についての登録が必要な限り、半永久的に同一区分に複数の商標権を所有していくことになり、・・・多額の更新登録料が課されることになる。」

「新たな商品等を含めて商品等を指定し直し、同一区分の商標を一つにしていくためには、既存の登録商標を放棄するなどして消滅させ、それにより権利が重複することなく商標登録を受けることは可能であるが、その場合、当該商標に係る商標権に空白を生じ不安定なものとなる」

 

商標の管理やコストを考慮すると、精神拒絶は企業の負担になると思います。

一方で、重複登録を認めると、例えば、不使用取消で複数の商標権に対して審判請求をしなくてはならなくなり、印紙代が高額になります。

また、ライセンスの場面でも、専用使用権の設定後に、重複部分について商標権が設定されることもあり得、専用使用権者が不利益を受けることも考えられます。

 

今回ご紹介した審決では、原査定が取り消されていますが、過去の審決では拒絶査定が維持されたケースもあります。

明確な判断基準の指針が欲しいですね。

今日は以上です。