独占禁止法に関する相談事例集(平成28年度)

こんにちは、高田馬場で特許事務所を共同経営しているブランシェの弁理士 高松孝行です。

以前のブログで取り上げた「独占禁止法に関する相談事例集」の平成28年度版が公表されましたので、ご紹介します。打ち合わせのイラスト

前回もご紹介しましたが、公正取引委員会は相談事例集を毎年公表しており、今回ご紹介する事例集は平成28年度に受けた相談事例をまとめたものになります。

今回の平成28年度版では、「共同研究開発に関するもの」として、次の3つの事例が掲載されています。

  1. 輸送機械メーカー8社が、共同して、輸送機械の部品の性能向上につなげるための基礎研究を大学等に委託し、研究成果を共有すること
  2. 家電メーカーが、共同研究開発の参加者である部品メーカーに対し、成果である技術の供与及び当該技術を用いた製品の販売を第三者に行うことを一定期間制限する際、特定の競争者に対してのみ制限期間を長期とすること
  3. 機械を利用するサービス事業者及びその機械のメーカーが、共同研究開発を実施するに当たり、その成果を利用した機械の競争者への販売を制限すること

1.について
公正取引委員会は、『本件は、我が国の輸送機械Aの製造販売分野における合算シェアが約90パーセントとなる8社による共同研究であり、また、一定の成果が得られた場合には、共同研究を継続することとしているものの、
①共同研究の対象は、部品αの性能向上につなげるための基礎研究に限られること
②8社が独自かつ自由に行う部品αに関する技術の研究活動並びに共同研究の成果を利用した製品の開発及び製造について、特段の制限を設けるものではないこと
③共同研究は、実施に当たり多くの人的資源等が必要となる一方、その成果が確実に得られるとは限らないため、個別各社では行いにくいものであり、共同して行う必要性が認められること
④共同研究の成果について、共同研究の非参加者に対しても合理的な対価で提供し利用を制限しないとしていることから、
我が国の輸送機械Aの製造販売分野及び部品αに関する技術の取引分野における競争を実質的に制限するものではなく、独占禁止法上問題となるものではない』と評価しています。

2.について
公正取引委員会は、『X社が、共同研究開発の参加者であるY社に対して、成果である技術αの供与及び当該技術を用いた装置a1の販売を第三者に行うことを一定期間制限する際、特定の4社に対してのみ制限期間を長期とすることは、独占禁止法上問題となるおそれがある』と評価しています。

3.について
公正取引委員会は、『本件は、X社が、P社に対し、共同研究開発の成果を利用した機械A’のY社への販売を制限するものであるが、
①本件の共同研究開発は、取引関係にある(競争関係にない)X社及びP社の間で機械Aを改良した代替品を開発するものであって、X社の競争者は、機械A’の供給を受けなくともサービスαの提供が可能であること
②サービスαの提供市場におけるシェアが約15パーセント(20パーセント以下)であるX社によって行われるものであることから、
独占禁止法上問題となるものではない。』と評価しています。

詳細は、相談事例集を参照していただくとして、ある程度分かり易い判断基準を示してくれていると思います。

もし同様な条件での共同研究を検討する場合には、参考になるのではないでしょうか?

なお、この事例集での見解はあくまで公正取引委員会のものですので、実際に裁判では異なる判断になる可能性があるので、留意してください。

ただ、独占禁止法に関する判例は少ないので、この法律を所管する公正取引委員会の見解は貴重なものと思われます。
共同研究を検討する際には是非参考にしてください。

なお、共同研究に関して不安がある方は、是非弊所にご相談ください。

今日は以上です。