期間徒過後の救済規定に係るガイドラインについてのQ&A

期間徒過後の救済規定に係るガイドラインについてのQ&A

こんにちは、高田馬場で特許事務所を共同経営しているブランシェの弁理士 高松孝行です。

Q&Aのイラスト特許庁から、期間徒過後の救済規定に係るガイドラインについてのQ&Aが公表されているので、今回はこれについて書きます。

特許法等の産業財産権法には、手続の期限に関する規定が数多く規定されています。

例を挙げると、審査請求期限(特許法48条の3)、拒絶理由通知対応期限(特許法17条の2)、年金支払期限日(特許法112条の2)等があります。

これらの規定により定められた期日は、経過してしまうと、原則として特許化できなかったり、特許権が消滅したりしてしまうような非常に重要なものとなっています。

これらの期日の管理を行っていない方はなかなか分かってもらえないかもしれませんが、これらの期日の管理には非常に大きなコスト(費用・時間)が掛かります。

ただ、そのようなコストをかけたとしても、どうしても期日を徒過してしまうことがあります。

そのような場合に備えて、産業財産権法には救済規定(特許法48条の3第5項等)が定められています。

しかし、法律の条文は、解釈によりある程度の幅を持つように、あえて抽象的な文言で規定されています。
一方、このような救済規定が適用されることは滅多ありあません。

そこで、特許庁では、救済規定に関するガイドライン(期間徒過後の救済規定に係るガイドラインを定めています。

このガイドラインによって、どのような場合に救済規定が適用されるのかが分かり易くなりました。

ちなみに、このガイドラインは、「救済規定に関し、救済要件の内容、救済に係る判断の指針及び救済規定の適用を受けるために必要な手続を例示することにより、救済が認められるか否かについて出願人等の予見可能性を確保することを目的」としています。

しかし、特許庁は、期限徒過の救済は非常に重要なので、特許庁への問い合わせが多くなるだろうと考えたのか、実際にそうだったのは分かりませんが、このガイドラインに対するQ&A(期間徒過後の救済規定に係るガイドラインについてのQ&Aも作成しています。

内容としては、次のようなものが含まれています。

  1. 期限徒過後の救済規定について
    1. 救済規定の概要に係るQ&A
    2. 救済の手続に係るQ&A
    3. 優先権の回復制度に係るQ&A
  2. 救済を求める手続の流れ
    1. 回復理由書に係るQ&A
    2. 回復理由書に添付すべき証拠書類に係るQ&A
  3. 救済されるための要件
    1. 「正当な理由があること(要件1)」に係るQ&A
    2. 「救済に係る手続の場合は救済手続期間内に手続をすること(要件2)」に係るQ&A
    3. 「優先権の回復の場合は出願及び優先権の主張を優先権の回復期間内にすること(要件2)」に係るQ&A
  4. 救済の認否の判断後の流れ
    1. 救済が認められた場合に係るQ&A
    2. 救済が認められなかった場合に係るQ&A

例えば、「1-1-6 平成23年改正法の施行日(平成24年4月)以降、「正当な理由」による期間徒過後の手続に関し、救済が認められた事例、認められなかった事例について、それぞれ代表的なものを教えてください。」という質問(Q)に対して、次のような回答が記載されています。

『A:[救済が認められた事例]

  • 出願人や代理人が期間管理にシステムを使用している場合において、通常想定される正しい選定・導入・使用を行っていたにもかかわらず、想定し得ないシステム不具合が生じたとの主張がなされ、システム会社の証明書により、当該不具合の内容と期間徒過案件との関連性について立証されたケース
  • 事務所の規模から期待される処理・管理体制が主張立証された上で、出願人等の突発的な病気を直接の原因として期間徒過に至ったとの主張がなされ、医療機関発行の診断書等の証拠書類により、病気と期間徒過との関連性について立証されたケース

[救済が認められなかった事例]

  • 在外者による手続において、出願人又は現地代理人から特許管理人への依頼が時差を考慮せず現地時間にて行われたことによって、特許管理人が当該手続の依頼を手続期間内に認識することができず、期間徒過に至ったケース
  • 出願人又は現地代理人等が特許管理人に対して手続を依頼する旨のメールは送付したものの、依頼についての意思疎通が適切に行われなかったことによって、特許管理人が当該手続を遂行する必要性について手続期間内に認識することができず、期間徒過に至ったケース』

このように、期間徒過後の救済規定に係るガイドラインよりも、個別具体的な説明がなされています。

期限徒過はしない方が良いに決まっていますが、もししてしまった場合には、期間徒過後の救済規定に係るガイドラインと、期間徒過後の救済規定に係るガイドラインについてのQ&Aの存在を思い出し、落ち着いて対応するようにしてください。

弊所では、期限徒過に関するご相談も承っております。
期限徒過に関して何かありましたら、弊所に是非ご相談ください。

今日は以上です。

この記事を書いた人

branche-ip