限定提供データに関する指針が公表されました

こんにちは、高田馬場で特許事務所を共同経営しているブランシェの弁理士 高松孝行です。

限定提供データに関する指針 表紙

引用:限定提供データに関する指針

平成30年の改正不正競争法に導入された「限定提供データ」に係る「不正競争」に関するガイドライン(限定提供データに関する指針)が、2019年1月23日に公表されましたので、今回はそれについて書きます。

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平成30年に不正競争防止法が改正され、主に次の3つに関して創設・改正が行われました。

  1. 「限定提供データ」の不正取得・使用等に対する民事措置の創設
    (第2条第1項第11号~16号、第2条第7項、第9条条第1項第8号)
  2. 「技術的制限手段」の効果を妨げる行為に対する規律の強化
    (第2条第1項第17号・18号、第2条第8項、第19条第1項第9号)
  3. 証拠収集手続の強化
    (第7条)

これらのうち、1の「限定提供データ」の不正取得・使用等に対する民事措置は、今まで不正競争行為とは認められていなかった行為を不正競争行為とするものです。

そこで、「限定提供データ」に関する不正競争について、どのような行為が新たな不正競争行為に該当するのかを具体例を盛り込んだ分かり易いガイドラインが必要ということで、今回ご紹介する限定提供データに関する指針が作成されました。

さて、この指針(ガイドライン)ですが、次のような目次となっています。

  1. はじめに
    1. 本指針の位置づけ
    2. 「限定提供データ」に関する検討が行われた委員会等
  2. 総説.
    1. 不正競争防止法の位置づけ
    2. 限定提供データに係る不正競争について(平成30年改正)
  3. 限定提供データについて
    1. 「業として特定の者に提供する」(限定提供性)について
    2. 「電磁的方法・・・により相当量蓄積され」(相当蓄積性)について
    3. 「電磁的方法により・・・管理され」(電磁的管理性)について
    4. 技術上又は営業上の情報について
    5. 「秘密として管理されているものを除く」について
    6. 適用除外の対象となる「無償で公衆に利用可能となっている情報(オープンなデータ)と同一」の情報について(法第19条第1項第8号ロ)
  4. 「不正競争」の対象となる行為について(総論)
    1. 各行為(「取得」、「使用」、「開示」)の対象について
    2. 「取得」について
    3. 「使用」について
    4. 「開示」について
  5. 不正取得類型について
    1. 「窃取、詐欺、強迫その他の不正の手段」について
    2. 不正取得類型に該当しないと考えられる事例
  6. 著しい信義則違反類型について
    1. 図利加害目的について
    2. 「限定提供データの管理に係る任務に違反して行う」行為について
  7. 転得類型について
    1. 取得時悪意の転得類型
    2. 取得時善意の転得類型

この目次を見れば分かるように、このガイドラインを読めば、なぜ限定提供データに係る不正競争を新たに規定する必要があるのかという理由から、各条文の考え方まで分かるようになっています。

例えば、改正不正競争防止法では、『この法律において「限定提供データ」とは、業として特定の者に提供する情報として 電磁的方法(電子的方法、磁気的方法その他人の知覚によっては認識することができない方法をいう。次項において同じ。)により相当量蓄積され、及び管理されている技術上又は営業上の情報(秘密として管理されているものを除く。)をいう。」と規定されています。

このガイドラインでは、不正競争防止法における「業として特定の者に提供する」という文言の解釈について、次のように解説されています。

『「限定提供データ」は、ビッグデータ等を念頭に、商品として広く提供されるデータや、コンソーシアム内で共有されるデータなど、事業者等が取引等を通じて第三者に提供する情報を想定している。
このため、本要件の趣旨は、一定の条件の下で相手方を特定して提供されるデータを保護対象とすることにある。
よって、相手方を特定・限定せずに無償で広く提供されているデータは対象とならない。』(下線追加)

また、「相当量蓄積」については、普通に考えると曖昧な文言になりますが、不正競争防止法における文言の解釈と共に、次のような具体例が記載されています。

  • 携帯電話の位置情報を全国エリアで蓄積している事業者が、特定エリア(例:霞ヶ関エリア)単位で抽出し販売している場合、その特定エリア分のデータについても、電磁的方法により蓄積されていることによって取引上の価値を有していると考えられるデータ
  • 自動車の走行履歴に基づいて作られるデータベースについて、実際は分割提供していない場合であっても、電磁的方法により蓄積されることによって価値が生じている部分のデータ
  • 大量に蓄積している過去の気象データから、労力・時間・費用等を投じて台風に関するデータを抽出・解析することで、特定地域の台風に関する傾向をまとめたデータ
  • その分析・解析に労力・時間・費用等を投じて作成した、特定のプログラムを実行させるために必要なデータの集合物

このように、このガイドラインには、平成30年形成不正競争防止法に新たに追加された「限定提供データ」に係る「不正競争」について、各文言の解釈だけでなく、具体例も記載されており、分かり易い資料となっています。

ビックデータやAI(人工知能)等のデータを扱ったビジネスを行っている企業や、これからこのようなビジネスに参入しようとしている企業は、データの取引相手との契約書を作成する際にも役立ちますので、是非このガイドラインを読んでみてください。

弊所では、不正競争防止法に関するご相談や不正競争防止法を考慮した契約書作成等のご相談も承っております。
これらについて何かありましたら、弊所に是非ご相談ください。

今日は以上です。