独占禁止法に関する相談事例集(平成30年度)

独占禁止法に関する相談事例集(平成30年度)

こんにちは、高田馬場で特許事務所を共同経営しているブランシェの弁理士 高松孝行です。

毎年ブログに取り上げていますが、2019年6月26日に「独占禁止法に関する相談事例集」の平成30年度版が公表されましたので、今回はそれをご紹介します。

「独占禁止法に関する相談事例集(平成30年度)」はこちら

独占禁止法に関する相談事例集は、公正取引委員会が毎年公表しているもので、今回ご紹介するものものは、平成30年度に受けた相談事例をまとめたものになります。

さて、今回は、この事例集に収録されている事例のうち、知的財産に関係する次の3つの事例についてご紹介します。

  1. 生産を委託した農産物の出荷制限
  2. 電子部品メーカーによるライセンス条件の設定
  3. 種苗メーカーの団体による種苗法遵守のための登録制度の設定

1.生産を委託した農産物の出荷制限について

生産を委託した農産物の出荷制限の概要
引用:独占禁止法に関する相談事例集(平成30年度)

公正取引委員会は、『本件取組は、X社が、農家に対し、農産物Aの出荷先を自己と密接な関係にあるY社が運営する卸売市場のみに制限するものであるところ、甲地域における農産物Aの出荷先のうち、Y社が運営する卸売市場への出荷量の割合は不明であるが、

  • X社が出荷先を制限する農産物は、自社と農家で費用負担を折半した苗木等を使用して生産された農産物Aに限定されていること
  • Y社が運営する卸売市場以外にも農産物Aの出荷先が複数存在するところ、X社から農産物Aの生産委託を受けた農家は、生産委託された農産物A以外の農産物Aについては他の出荷先にも出荷が可能であること
  • X社が農産物Aの出荷先を制限する農家は数名に限定されており、農業協同組合、商系業者等は、当該農家が生産を委託された農産物A以外の農産物Aに加えて、当該農家以外の多数の農家から農産物Aを集荷することが可能であること

から、甲地域における農産物Aの集荷市場において市場閉鎖効果が生じるおそれは小さく、その他の取引拒絶、排他条件付取引又は拘束条件付取引として独占禁止法上問題となるものではない。』と評価しています。

「市場における有力な事業者が、取引先事業者に対し自己又は自己と密接な 関係にある事業者の競争者と取引しないよう拘束する条件を付けて取引する行為を行うことにより、市場閉鎖効果が生じる場合」には、当該行為は不公正な取引方法に該当して違法となるが、本件のように、販売データの収集を目的として、生産を委託する農産物に限定 して、関連企業が運営する卸売市場のみへの出荷を求めることは、独占禁止法上問題とならない場合もあるということになります。

2.電子部品メーカーによるライセンス条件の設定について

電子部品メーカーによるライセンス条件の設定の概要図
引用:独占禁止法に関する相談事例集(平成30年度)

公正取引委員会は、『本件取り組みは、X社が、製造特許等のライセンスに当たって、ライセンスの相手方との交渉を踏まえて、ライセンシーによる事業活動を制限する条件を課したり、ライセンス料率を高額に設定するものであるところ、

  • ライセンシーによる競合電子部品A1の製造を禁止することは、外形上、権利の行使とみられる行為に該当し、かつ事実上、ライセンサーがライセンスする製造特許等の範囲を指定しているに過ぎず、ライセンサーがライセンシーに対し、ライセンスする技術を利用して事業活動を行うことができる分野(特定の商品の製造等)を制限する行為に該当すること
  • ライセンシーによる競合電子部品A1の製造を認める代わりにライセンス料率を高額に設定することは、外形上、権利の行使とみられる行為に該当し、かつ、ライセンシーが合意できる範囲で設定することを前提とすれば、ライセンシーの事業活動を不当に制限するとまでは考えられないこと

から、ライセンスする相手方によって、製造が禁止される電子部品A1の範囲やライセンス料率の差が不当に差別的である場合は、取引条件等として、独占禁止法上の問題となるおそれがある。』と評価しています。

「ライセンサーがライセンシーに対し、当該技術を利用して事業活動を行うことができる分野(特定の商品の製造等)に制限を課すことは、原則として不公正な取引方法に該当しない(知的財産ガイドライン第4-3(1)ウ〔技術の利用分野の制限〕)」が、「事業者が不当に、ある事業者に対し取引の条件又は実施について有利な又は不利な扱いをすることは、不公正な取引方法(一般指定第4項〔取引条件等の差別取扱い〕)に該当する場合があることを示しています。

3.種苗メーカーの団体による種苗法遵守のための登録制度の設定について

種苗メーカーの団体による種苗法遵守のための登録制度の設定の概要図
引用:独占禁止法に関する相談事例集(平成30年度)

公正取引委員会は、『本件取組は、事業者団体であるX協会が、会員による種苗Aの販売における表示の適法性を確保することを目的として、品種に係る登録制度を設けるものであるところ、

  • 会員による種苗Aの販売における表示の適法性を確保することは、需要者による商品選択に資するものであり、需要者の利益を不当に害するものではないこと
  • 全ての会員が対象となっているため、会員間で不当に差別的な内容ではなく、また、種苗Aのメーカーは会員・非会員を問わずX協会による登録を受けずに種苗Aを販売することが可能であり、種苗Aの包装等にはX協会による登録を受けているか否かが表示されないため、会員と非会員の間で不当に差別的な内容ではないこと
  • 会員による種苗法の遵守という社会公共的な目的に基づく取組であり、取組の内容も合理的に必要とされる範囲内のものであること

に加え、登録制度を利用するか否かは会員の任意であることから、事業者団体による自主規制として独占禁止法上の問題となるものではない。』と評価しています。

「事業者団体が、営業の種類、内容、方法等を関連して、消費者の商品選択を容易にするための表示・広告すべき情報に係る自主的な基準を設定することについては、独占禁止法上の問題を特段に生じないものも多い」が、事業者団体が、会員による種苗の販売における表示の適法性を確保することを目的として、品種に係る登録制度を設けることは、独占禁止法上の問題とならないことを示しています。

弊所では、知的財産に関する契約や権利行使において、独占禁止法も考慮した見解を出すようにしております。
何かありましたら、弊所に是非ご相談ください。

今日は以上です。

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