独占禁止法に関する相談事例集(令和元年度)

独占禁止法に関する相談事例集(令和元年度)

こんにちは、高田馬場で特許事務所を共同経営しているブランシェの弁理士 高松孝行です。

毎年ブログに取り上げていますが、2020年6月23日に「独占禁止法に関する相談事例集」の令和元年度版が公表されましたので、今回はこれをご紹介します。

「独占禁止法に関する相談事例集(令和元年度)」はこちら

独占禁止法に関する相談事例集は、公正取引委員会が毎年公表しているもので、今回ご紹介するものものは、令和元年度に受けた相談事例をまとめたものになります。

さて、今回は、この事例集に収録されている事例のうち、知的財産に関係する次の事例についてご紹介します。

  • 農作物の新品種のブランド化推進団体が,会員である生産者に対し,当該新品種について,専用肥料の使用及び特定の農業協同組合への全量出荷を義務付けること
独占禁止法に関する相談事例集(令和年度)のグラフ
引用:独占禁止法に関する相談事例集(令和年度)

公正取引委員会は、次の2点について、独占禁止法上問題となるか判断しています。

  1. 肥料βの使用の義務付け
  2. 新品種αの全量出荷の義務付け

1.の「肥料βの使用の義務付け」については、

  • 一般的に、農畜産物の品質を揃え、ブランド農畜産物として出荷するために、 品質の均一化等に関し合理的な理由が認められる必要最小限の範囲内で、事業者 団体が取り扱う農畜産物の生産方法を統一すること(使用する農薬や肥料その他の生産資材を同じ品質・規格とすること等)は、それ自体は独占禁止法上問題となるものではない(農協ガイドライン第2部第2-1⑷注7参照)
  • 肥料βは、新品種αのために開発された専用肥料であり、新品種αの品質の向上、生産量の増大に最適となるように設計されたものである。また、現時点では、肥料βと同じ品質・規格の肥料は市販されていない。このため、新品種αの生産に当たって会員生産者に肥料βの使用を義務付けることは、合理的な理由に基づくものであり、かつ、必要最小限の範囲内の行為であるといえる

と認定し、『会員生産者に対する肥料βの使用の義務付けは、独占禁止法上問題となるものではない』と評価しています。

2.「新品種αの全量出荷の義務付け」については、『事業者団体が、構成に係る顧客・販路ついて制限し、これより一定の取引分野における競争を実質的制限すことは、独占禁止法第8条1号の規定に違反する(事業者団体ガイドラン第2-3〔顧客、販路等制限行為〕)としながら、

  • 新品種αについては生産・流通前でるものの、前記の通り、農作物Aについては、品種間において活発な競争が行われている。新品種αにおいても、その他の品種との間に需要の代替性があり、品種間で活発な競争が行われることになると考えられる
    また、本件取組によって農作物Aの取引に影響が生じる地理的範囲については、農作物Aの取引先が農作物Aを仕入れることが可能な地域は広範に及ぶ可能性があるものの、会員生産者の所在地や新品種αの出荷先である農業協同組合Zの地区はいずれも甲地域にあるので、主として甲地域の範囲に限られると考えられる
    以上を踏まえ、本件取組に係る一定の取引分野については、甲地域における農作物Aの販売分野と確定した
  • 甲地域における農作物Aの販売分野に占める新品種αの流通量は、将来的にみても最大で4パーセント程度であると見込まれる。このため、新品種αの出荷先を農業協同組合Zに限定するとしても、農作物Aの販売に関する競争に与える影響は軽微である

と認定し、新品種αに係る農業協同組合Zへの全量出荷の義務付けは、一定の取引分野における競争を実質的に制限するものではなく、独占禁止法上問題となるものではない』と評価しています。

この事例は、知的財産に関するライセンス契約の条項(条件)を考える際に役立つ情報だと思います。

弊所では、知的財産に関する契約書を作成する際に、独占禁止法も考慮するようにしております。
何かありましたら、弊所に是非ご相談ください。

今日は以上です。

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