こんにちは。ブランシェ国際知的財産事務所の弁理士 鈴木徳子です。

今日は、昨日の記事(美容室の商標権侵害事件)の続きです。

昨日の記事は、被告の先使用権の抗弁の主張が認められなかったというところまででした。

 

そもそも、先使用権とはどういうものなのでしょうか。

先使用権とは、他人の商標登録の出願前から、日本国内において不正競争の目的でなく、自己がそれと同一又は類似の商標を使用しており、かつそれが自己の業務にかかる商品又は役務を表示するものとして周知になっている場合に、引き続き自己の商標を使用することが認められる権利です(商標法32条)。

商標権者からの権利行使に対する抗弁として、その商標の使用者から主張されます。

 

本件事件に立ち返ると、被告の先使用権の抗弁の主張が認められるには、原告の商標「Cache」の出願時点での被告標章の周知性が要件となります。

被告は、「cache」の店舗名で約23年間営業したことをもって自己標章の周知性を主張しました。

しかし、裁判では、下記の理由により先使用権を否定しています。(下線部は加筆)

・・・先使用権に係る商標が未登録の商標でありながら、登録商標に係る商標権の禁止権を排除して日本国内全域でこれを使用することが許されるという、商標権の効力に対する重大な制約をもたらすことに鑑みると、本件においても、単に当該商標を使用した美容室営業の顧客が認識しているというだけでは足りず、少なくとも美容室の商圏となる同一及び隣接する市町村等の一定の地理的範囲の需要者に認識されていることが必要というべきである。・・・

・・・被告が長年の美容室営業によって固定客を獲得しているとしても、同一及び隣接する市町村等には他の美容室を利用する者も多数存在していると考えられ、これらの者の被告標章1に関する認識は全く明らかでない・・・

 

被告は本件の事件を通じ、約23年間使用してきた店舗名を「aisé エゼ」に変更し、店舗のテントや置き看板の変更、賠償金の支払いをするに至りました。

やはり、店舗名であってもきちんと商標登録をしておくべきでした。

今日は以上です。