特許翻訳の世界にも機械化の波が!

こんにちは、高田馬場で特許事務所を共同経営しているブランシェの弁理士 高松孝行です。

現在、人工知能(AI)に関係する新聞記事や報道を見ない日はないという状況ですが、特許翻訳の分野でも機械化が進んできたということについて書きます。
ただし、AIによる翻訳という話ではありません。

国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)プレスリリースによると、2017年4月から、高精度でセキュアな英文特許翻訳の提供を開始するようです。

特許翻訳というと、独自のクレームの記載方式や明細書中に独自の言い回し等があるため、自動翻訳は難しいと言われていましたが、このサービスを用いると、翻訳精度が相当向上した翻訳文が得られるようです。

このサービスの詳細はまだ分かっていませんが、次の4者の協力の下、提供されるようです。

そして、このサービスのポイントとして、次の3点があるようです。安全なネットワークのイラスト

  1. 大規模な対訳データを活用した自動翻訳エンジンにより、従来よりも大幅に翻訳精度が向上
  2. 特許翻訳固有の問題解決で化合物表記・図・表を含む特許公報の表記通りの正確な翻訳が可能に
  3. 企業の情報機密管理上重要な特許情報をセキュアなクラウド上で、大規模に翻訳するサービスを展開

3.については、セキュリティ上のポイントなので、どこまで必要か分かりませんが、1.および2.については、非常に役立つポイントになると思います。

ちなみに、プレスリリースには、翻訳例として次のものが掲載されています。

特許請求項例文
「A system according to claim 4 , the controller including: a) A control store for storing location data, the location data indicating a location for each display at the remote site; and, b) A control processor, the control processor being adapted to: i) Determine the information type of the respective information to be displayed; ii) Determine the location in which the respective information is to be displayed, the location being determined in accordance with the information type; iii) Schedule the display of the respective information at the respective location; and, iv) Transfer the corresponding display data to the display system.」

翻訳例文
「制御装置であって、a) 遠隔地における各表示のための位置を表す位置データを記憶するための制御および、 b) i) 表示されるべき各情報の情報種別を決定し、 ii) それぞれの情報位置が表示されるべきかを決定するため、位置は情報の種類に応じて決定され、iii) それぞれの位置で各情報のディスプレーを予定することおよび、iv) 表示装置に対応する表示データを転送すること、に適応された制御プロセッサを含む、請求項4のシステム。」

この例文を見ると、なかなか使える翻訳システムになっているのではないかと思います。
(もちろん、実際に使ってみないと、どこまで使えるかは分かりませんが。)

また、翻訳で問題になる化学物質名についても、次のようにキチンと翻訳されるようです。

化学物質例
「5-(3′-(3″-(2,4-diamino-6-ethylpyrimidin-5-yloxy)propoxy)phenyl)-6-ethylpyrimidine-2,4-diamine」

翻訳例
「5-(3′-(3″-(2,4-ジアミノ-6-エチルピリミジン-5-イルオキシ)プロポキシ)フェニル)-6-エチルピリミジン-2,4-ジアミン」

なかなかすごいです。この表現以外の表現でもこのように変換されるのであれば、化学式が記載された特許文献も読みやすく変換されるかもしれませんね。

このサービスの利用方法としては、①たとえば無効審判での無効理由を探す際に、海外特許文献調査に利用するということが考えられます。

最終的には海外特許文献の原文を精読する必要がありますが、まずはこのサービスを使って作成した日本語訳文を読んで、精読する必要があるものと必要がないものを分けるということにも使えるかもしれません。

また、英語で記載された外国特許出願(PCT出願)を日本語に訳す際に、まずこのサービスを使って日本語訳文を作成し、それを人間が修正するというということにも使えるかもしれません。これは翻訳精度によると思いますが。。

なお、NICTは、特許を含む多分野・多言語での長文翻訳の品質を今後更に改善するために、新たな技術の研究を推進して行くそうなので、現状では難しくても、将来は上記のようなことに利用できるようになるかもしれません。

期待しましょう!

ちなみに、英日だけではなく、日英の翻訳サービスも手ごろな料金で行ってくれるとありがたいと個人的には思ってます。

今日は以上です。