地理的表示登録産品に関する論文が公表されました

こんにちは、高田馬場で特許事務所を共同経営しているブランシェの弁理士 高松孝行です。

論文の表紙

引用:日本マーケティング学会HP

今回は、日本マーケティング学会から、地理的表示登録産品に関する次のワーキングペーパーが公表されましたので、それについて書きます。

 

著者:木村純子氏(法政大学経営学部教授)
タイトル:地理的表示による農林水産物・食品の付加価値創出
日本マーケティング学会 ワーキングペーパーVol.3 No.12

 

内容としては、既に登録された12の産品を、次のようなターゲット市場と消費者の認知度に応じて4つのタイプに分類し、各タイプ特有のSWOT分析を行っています。

分類名特徴対象農産品
Big King輸出志向が高く、消費者の認知度が高い但馬牛、神戸ビーフ、市田柿
Old Glory国内市場を志向し、消費者の認知度が高い三輪素麺、鹿児島の壺造り黒酢
Ambitious Pilgrim輸出志向であり、産品に対する消費者の認知度は高くない八女伝統本玉露
Sudden Hero国内市場を志向し、産品に対する消費者の認知度は低い江戸崎かぼちゃ、吉川ナス、谷田部ねぎ、山内かぶら、加賀丸いも、三島馬鈴薯

各産品の詳細はこのワーキングペーパをご覧になっていただければと思いますが、地理的表示登録産品になったことにより、次のような効果があったことが報告されています。

  • 「GI登録後の価格プレミアムは但馬牛と神戸ビーフにおいて確認され約15%価格が上昇した」(6頁)
  • 「産品は主に生産地内で販売されているが、GI登録によって産品の認知度が高まったことから国内需要が増加している。たとえば、加賀丸いもは50%が県外で販売されるようになった。」(11頁)
  • 「絶滅の危機に瀕している古代からの在来品種であるが(吉川ナス、谷田部ねぎ、山内かぶら、加賀丸いも)、GI登録によって品種の存続が保証された」(11頁)
  • 「GI登録後、『国からのお墨付き」を得たこととマスメディアから注目されたことで、農家に自信が生まれモティベーションが向上した。
  • 「京都のミシュラン店菊乃井から山内かぶらに1トン送って欲しいという依頼があったように、地域外の評判の高いレストランや食にこだわる消費者からの需要も急速に増加している。」

もちろん、このように上手く行っていない産品もありますが、実際にこのような事例がある以上、これらの効果を期待して、GI登録を目指してもよいのではないでしょうか?

なお、このワーキングペーパーでは、GI登録の効果以外に、GI登録による効果を創出するための課題も指摘しています。

たとえば、「GI登録による効果を創出するためにはGI産品に関わるガバナンス・システムの構築と適切な実勢が必須である」としています。

地理的表示に登録されても、これらの課題をクリアする必要があることに留意してください。

ちなみに、我々が以前行ったセミナーでは、GI登録をスムーズに進めるためには取りまとめ役が必要と指摘していましたが、GI登録後も取りまとめ役が必要になるようですね。

今日は以上です。