無効審判の被請求人が権利放棄した場合

 

こんにちは。ブランシェ国際知的財産事務所の弁理士 鈴木徳子です。

最近の審決で、ちょっと気になったものがあったのでご紹介します。

商標の無効審判の係属中に、被請求人が権利放棄をしたというものです。弁理士試験問題を彷彿させる内容だったので、ご紹介します。

 

事件の内容は次のとおりです(無効2013-890004)。

登録5523954号「白樺/しらかば」(下記画像)は、第20類「いす」の他に、第11類、第21類、第25類、第44類の指定商品・役務を指定して、平成24年9月28日に設定登録されたものです。

 

しらかばこの登録商標の指定商品・役務中、第20類「いす」についての登録に対して、無効審判が請求されました(平成25年1月17日)。

請求の理由は、本件商標は、漢字「白樺」及び平仮名「しらかば」を普通に用いられる方法で表示したにすぎず、指定商品中「白樺製いす」について使用するときは自他商品識別機能を発揮し得ないため、商標法3条1項3号に該当する。また、「白樺製いす」以外の「いす」に使用するときは、商品の品質誤認を生じさせるおそれがあり、

商標法4条1項16号に該当するというものでした。

 

上記商標の権利者である、被請求人は、無効審判が請求された後に、商標権の放棄書を提出しました。(無効審判は第20類「いす」についてのみ請求されていたのですが、被請求人は権利全体についての放棄書を提出しています。) この放棄の登録は平成25年2月27日でした。

 

審判では、被請求人の放棄について次のように判断しています。(下線部は加筆)

商標権の放棄による消滅は登録しなければ効力を生じない。平成25年2月27日に登録された、本件商標の放棄の効果は、無効審判の請求の日(平成25年1月17日)には遡及しない商標法46条2項によれば、無効審判は商標権の消滅後においても請求することができるとされており、この趣旨に照らしても、商標権の放棄以前になされた本件無効審判の理由が、当該商標権の放棄により解消するということはできない

 

最終的に、審判では請求人の主張を認め、第20類「いす」についての登録は無効となりました。

 

それにしても、審判請求の対象である第20類「いす」以外の指定商品等についても放棄した被請求人の意図がよくわかりません。

全部で5区分にわたる商標の出願・登録の印紙代は決して安くありませんし、登録から放棄まで半年も経っていませんので。。

 

今日は以上です。

※画像引用先:特許電子図書館

 

 

 

 

 

 

 

この記事を書いた人

鈴木 徳子