中小企業の知的財産戦略を考える際に役立つ資料9

中小企業の知的財産戦略を考える際に役立つ資料9

こんにちは、高田馬場で特許事務所を共同経営しているブランシェの弁理士 高松孝行です。

今回は、少し古い資料になりますが、2008年に特許庁がまとめた「ものづくり中小企業のための意匠権活用マニュアル」をご紹介します。 ←ダウンロードできなくなりました
(このマニュアルは、意匠登録出願の審査を行っている特許庁がまとめたものですので、非常に信頼性が高いです。)

ソファーのイラスト意匠権についてまとめた資料は、市販されている本も含めてあまりありません。学術書はいくつかありますが、そのような本ではビジネス上の使い方等はほとんど取り扱っていません。

一方、このマニュアルには、意匠権の効果だけでなく、意匠権を活用するために必要な社内体制等についても解説しています。

さて、このマニュアルでは、まずデザインおよび意匠権の重要性についてつぎのように解説しています。

  • 参入企業が限られている市場にある企業でも、他社との差別化要素のひとつとして製品デザインは重要です。
  • 独自の技術に基づいて他社に先行しているような企業では、すでに特許権を活用して他社の参入を防いでいる場合もありますが、特許より権利化が早いこと等の利点も活かし意匠権を技術保護の補完的な手段として用いることができます。
  • 顧客が一般消費者等の企業では、意匠権で模倣の発生を抑止したり、模倣品・類似品が発生した場合の対策として活用することができます。
  • 製品を事業者に販売する場合や完成品メーカーに部品を納入する企業では、デザインの善し悪しが直接取引先にアピールしない場合であっても、意匠権によって貴社独自のデザインを保護することは取引の安定や信頼性確保にもつながります。

そして、意匠権を取得するメリットとして次のようなものがあるとしています。

  • 意匠権の取得によって、短期間のうちに模倣品・類似品の発生抑止・対応が可能になる
  • 意匠権の取得によって、中長期的にも、市場で安心して事業継続や事業展開をすることが可能となったり、他者の安易な参入を防止して利益率をあげることができたり、事業利益に貢献する

このようなメリットを有する意匠権について、このマニュアルでは次のような流れで解説されています。

  1. ビジネスの発展のために意匠権を活用してみませんか?
  2. 意匠を出願してみよう![基礎編]
  3. 意匠権を戦略的に活用してみよう![応用編]
  4. 参考資料

特に、1章の「3.経営者のための製品デザイン保護体制・人材育成のあり方」では、社内体制や人材育成について書かれており、たとえば「権利の取得から維持の判断には、経営トップが関与することが望ましい姿」と書かれています。

製品デザインは、商品の売り上げに直接関与する部分ですので、それに直結する意匠権の権利取得・維持の判断には経営層が関与することが望ましいのではないでしょうか?

また、このマニュアルには、戦略的意匠権の活用方法についても解説しています。

たとえば、「主要な技術を特許で押さえ、周辺の技術で意匠権によって押さえられるものは意匠権で保護する」ということも記載されています。

このように、このマニュアルには、単に意匠権の内容や取得方法だけではなく、人材育成や活用方法等のさまざまな情報が記載されています。

製品デザインの保護にご興味のある方は、是非ダウンロードしてご覧になってください。

ちなみに、意匠権を取得するには費用がかかりますが、このマニュアルを活用して、それ以上の効果が得られると思われるのであれば、積極的に意匠権を取得してみては如何でしょうか?

今日は以上です。

PS:ダウンロードできないことが分かりましたので、リンクを削除しました

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