「業務提携に関する検討会」報告書が公表されました

こんにちは、高田馬場で特許事務所を共同経営しているブランシェの弁理士 高松孝行です。

「業務提携に関する検討会」報告書の表紙

引用:「業務提携に関する検討会」報告書

令和元年(2019年)6月に、公正取引委員会から「業務提携に関する検討会 」報告書が公表されましたので、今回はそれについて書きます。

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この報告書は、業務提携を活用しようとする事業者の利便性や予見可能性の向上に資すると共に、独占禁止法違反行為の未然防止につながるものと考えて作成されました。

なお、この報告書は、公正取引委員会競争政策研究センターにおいて開催された「業務提携に関する検討会」の見解を示すものであり、公正取引委員会の正式な見解を示すものではない点に注意してください(報告書にも明記されています)。

さて、この報告書の内容ですが、次のような目次となっています。

  1. 第1 はじめに
    1. 業務提携の現況
    2. 本検討の目的
    3. 本検討の視点・進め方
  2. 第2 過去の業務提携の相談事例等における考え方の整理・分析
  3. 第3 業務提携と企業結合の異同に係る検討(事業活動の一体化の観点から)
    1. 業務提携と企業結合の類似性
    2. 企業結合とは異なる業務提携特有の性質
  4. 第4 業務提携に係る個別論点の検討
    1. 業務提携に伴う情報交換・共有について
    2. コスト構造の共通化について
    3. イノベーションに与える影響について
  5. 第5 業務提携に関する独占禁止法上の考え方
    1. 検討対象市場
    2. ハードコア・カルテルとの区別
    3. 競争への影響評価
    4. 業務提携の個別類型ごとの具体的な考え方
  6. 第6 業種横断的データ連携型業務提携に関する独占禁止法上の考え方
    1. 問題の所在
    2. 業種横断的データ連携型業務提携における独占禁止法上の論点の所在
    3. 独占禁止法上の評価を行う際の個別的論点
    4. 業種横断的データ連携型業務提携に係る独占禁止法上の考え方(総論)
    5. 業種横断的データ連携型業務提携の具体的形態における主要な論点
  7. 第7 おわりに

詳細は、報告書を読んでいただければよいと思いますが、この報告書では、業務提携に関し、次のような形態別に整理して議論されています。

事業フローと独占禁止法との関係図

引用:「業務提携に関する検討会」報告書

これらのうち、知的財産に関連する形態は次の3つになり、各形態ごとに対応するガイドラインが既に整備されています。

  • 研究開発提携 → 共同研究開発ガイドライン
  • 技術提携 → 知的財産ガイドライン
  • 標準化提携 → 標準化・パテントプールガイドライン

そして、「イノベーションに与える影響について」の項目において、知的財産に関する考え方について、次のようにまとめられています。

  • 業務提携に対する独占禁止法の適用は、業務提携という行為を行った場合に同法第3条又は第19 条の違反を問えるかという問題になるため、競争に与える効果としては、第3条違反であれば、一定の取引分野における競争の実質的制限の有無が問題となり、第19 条違反であれば、公正競争阻害性の有無が問題となる。一定の取引分野における競争の実質的制限や公正競争阻害性の有無を検討するためには、業務提携により影響が生じる市場がどこであるかを考えなければならない。
  • 業務提携(という行為)を行うことでイノベーションが阻害された場合に、それにより影響を受ける製品や技術がどのようなものであるか不明なものもあれば、それまでの提携当事者の研究開発活動、既に保有している技術や生産している製品等から推測可能なものや、相当な確度で具体的に市場への投入が見込まれるため市場化されたとみなせるものまで、様々あると考えられる。
  • これまで、そして現に提携当事者が行っている研究開発活動、保有している技術や生産している製品、現に活動している市場における他の事業者の研究開発活動等の状況などから、当該業務提携によって提携当事者や他の事業者の研究開発活動の意欲が減退するなどした場合に、どのような技術や製品について、どのような悪影響が生じるかを相当程度具体的に予見できる場合は、競争に与える影響の評価において、これを考慮することができると考えられる。
  • 他方で、将来生み出される商品やサービスが具体的に予見できるとまではいえない状態であっても、事業者間で活発な研究開発活動が行われている場合もある。そのような状況において、業務提携の内容が研究開発の意欲を減退させ、イノベーションに悪影響を与えるようなものである場合には、独占禁止法上問題にすべきとも考えられる。

そして、「業種横断的データ連携型業務提携に関する独占禁止法上の考え方」の項目において、業種横断的データ連携型業務提携に関する独占禁止法上問題となり得るものとして具体的に次のような行為を挙げています。

  • 関連・隣接市場における市場支配力を用いた不当なレバレッジ(てこ)効果によりデータ収集源を自らに集中させる手法
    想定される例:不当な抱き合わせ、不当なリベート等を用いて、データ収集源たる取引先を一極的に獲得すること
  • プラットフォーム型ビジネスにおいて、プラットフォーム上の各顧客群間でのコスト分配上の諸条件(対価、利用、権利義務に係る条件等)に関し、一方の顧客群に対する優越的な地位を濫用して得た利益を原資として、間接ネットワーク効果等の増幅経路の起点となる他の顧客群を本来以上に優遇・誘引する手法
    想定される例:マッチング型プラットフォームを介した取引において、取引実施過程で一方当事者に生じる知的財産権等の権利を、他方当事者に一方的に帰属させる旨の利用規約
  • 個人情報保護法等に照らして不当な方法により、又は、顧客の認知・行動上のバイアスやリテラシーの限界を悪用して、本来であれば当該顧客は提供しないデータを収集する手法
    想定される例:顧客がプライバシーポリシーを読まない又は理解できないまま同ポリシーに同意することとなる状態を作為的に創出し、本来取得し得ない個人情報や行動履歴データを収集すること
  • 顧客に対し、ネットワーク外部性に基づく利便性の高さを誤認させ、誘引するようなぎまん的手法
    想定される例:サービス利用者数等の情報の水増し
  • 競合するサービス等の利用を不当に制限する手法(事実上利用が制限される間接的なものを含む。)
    想定される例:シングルホーミング114の不当な義務付け、APIの開放・接続について不当に制限を課すこと、データの相互運用を阻害するため不必要な規格・技術を設定すること
  • 合理的でないサンクコスト(埋没費用)を意図的に創出し、スイッチングコストを著しく上昇させる手法
    想定される例:共同研究開発等で利用する設備(他の用途への転用が困難なもの)への合理性のない多額投資の義務付け

さらに、「業種横断的データ連携型業務提携に係る独占禁止法上の考え方(総論)」として、次のような行為が独占禁止法上問題となる可能性があるとしています。

  1. データ連携に向けた標準化活動
    1. 標準化の範囲の不当な拡張
    2. 技術提案等の不当な排除
    3. 標準化活動への参加制限
    4. 標準化活動を通じた共同行為(スピルオーバー問題)
    5. 標準化活動に伴うその他の行為
  2. データ共有等を通じた集積・解析・新データ創出に係る活動
    1. 必要な範囲を超えたデータ共有等を通じた集積・解析・新データ創出の共同化
    2. 正常な競争手段の範囲を逸脱するような人為性を有する行為を伴うデータ収集を通じた市場支配力の形成
    3. データ共有等を通じた集積・解析・新データ創出活動への参加制限
    4. 共有・共同収集されたデータの一方的帰属・利用に係る制約
    5. データ共有等を通じた共同行為(スピルオーバー問題)
  3. 創出データを利用した技術や商品・サービスに係る事業活動
    1. 創出データへの共同のアクセス拒絶
    2. 創出データへの単独のアクセス拒絶
    3. 創出データの一方的帰属・利用に係る制約
    4. 創出データの利活用における共同行為(スピルオーバー問題)

このように、この報告書には、業務提携に関して独占禁止法上問題となる点について詳細に記載されています。

今後、業務提携を活用したビジネスを考えている企業、特に業務提携を行って大量のデータを活用したビジネスを考えている企業は、是非この報告書を読んでみてください!

業務提携を考える上でのヒントが見つかると思います。

弊所では、独占禁止法に関するご相談も承っております。
何かありましたら弊所に是非ご相談ください。

今日は以上です。