「家畜人工授精用精液等譲渡契約約款条項例」が公表されています

「家畜人工授精用精液等譲渡契約約款条項例」が公表されています

こんにちは、高田馬場で特許事務所を共同経営しているブランシェの弁理士 高松孝行です。

牛のイラスト令和2年10月1日から、以前のブログで紹介した「家畜遺伝資源不正競争防止法」が施行されましたが、どのような契約をしておけば、この法律を活用して、家畜遺伝資源を守ることができるのか分からない事業者も多いと思います。

そこで、農林水産省は、家畜人工授精用精液等譲渡契約約款条項例(契約のひな形)を作成し公表しています。

今回は、この条項例をご紹介します。

「家畜人工授精用精液等譲渡契約約款条項例(契約のひな形)(令和元年9月30日)」はこちら

「家畜遺伝資源不正競争防止法」を含む和牛遺伝資源の管理に関する周知用チラシはこちら

この条項例では、次の項目が定められています。

  1. 総則
  2. 国外利用及び目的外利用の禁止
  3. 品質及び在庫の管理
  4. 第三者への譲渡
  5. 精液等の返還
  6. 違約金

詳細は、この条項例をご覧になっていただければと思いますが、この条項例には、各条項に関する逐条解説も記載されています。

したがって、この条項例を基に、実情に合った条項に修正することも比較的容易になっています。

例えば、4条1項には、

「乙は、甲から譲渡された精液等の一部または全部を第三者に譲渡する場 合には、乙と当該第三者間の契約において、本契約により乙が負う義務と 同様の義務を当該第三者に課さなければならない。」

と列記されていますが、この条項の逐条解説として、次のように記載されています。

「本条第1項は、乙が、精液等を第三者へ譲渡(有償・無償を問わない)する場合に、この契約によって乙が負う義務と同様の義務を当該第三者に課さなくてはならないとするものです。すなわち、要約すると、当該第三者には、

  1. 精液等を、国内における繁殖用牛若しくは肥育用牛の生産又は国内における繁殖用牛若しくは肥育用牛の生産の用に供する家畜受精卵の生産以外に利用してはならないこと(第2条に相当)
  2. 精液等を的確かつ衛生的に管理して品質を保全すること並びに保存、利用、廃棄及び譲渡に関する事項を記録し、甲の求めに応じてこれを報告する こと(第3条に相当)
  3. 精液等を別の第三者へ譲渡する場合にあっては、①~④の義務を課すこと(本条第1項に相当)
  4. 精液等を別の第三者に譲渡する場合には、当該精液等の品質について一 切の責任を負うこと(本条第2項に相当)

の義務が課されることとなります。なお、2の甲への報告義務については、実務的には、甲と乙の取り決めにより、当該第三者による保存等の記録の甲に対する報告の手続きを、第三者にかわって乙が実施することも考えられます。本条ただし書の適用に当たっては、当該第三者が甲に第1条第2項の書面 を提出していることの確認が必要となる場合が想定されます。これについては、基本的には当該第三者に挙証責任があるところですが、実務的には、第1条第2項の書面提出に対する受領書が発行されているのであればその提示や、 乙から甲への照会によることが考えられます。」

このように、修正への示唆も記載されています。

家畜人工授精用精液等譲渡契約書を作成される際には、この条項例をそのまま使うのではなく、実情に合わせて修正することをお勧めいたします。

ちなみに、その修正は厳しければ厳しい程よいというものではありません。厳しくすると、手続きが煩雑になることが多いからです。

実際の運用を考慮しながら検討し、手間がかからず、かつ十分な管理ができるようにしてください。

家畜遺伝資源不正競争防止法が今後どのような運用をされるかは不明ですが、自分が提供する精液等が適切に運用・管理されるような家畜人工授精用精液等譲渡契約書とした方が、ブランド価値も向上すると思います。

弊所では、家畜人工授精用精液等譲渡契約書のご相談も承っております。
何かありましたら、弊所に是非ご相談ください。

今日は以上です。

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