「インターネット上の著作権侵害(海賊版)対策ハンドブック(令和4年度)-総論編-」が公表されました

こんにちは、高田馬場で特許事務所を共同経営しているブランシェの弁理士 高松孝行です。

2023年8月4日に、文化庁から「インターネット上の著作権侵害(海賊版)対策ハンドブック(令和4年度)」が公開されたので、今回はこれについて書きます。

著作権侵害(海賊版)対策ハンドブック(令和4年度)の表紙
引用:著作権侵害(海賊版)対策ハンドブック(令和4年度)

「インターネット上の著作権侵害(海賊版)対策ハンドブック(令和4年度)-総論編-」はこちら

このハンドブックは、インターネットという国境を越えた場所における海賊版対策に
関しては、実務上、各国の著作権保護制度に則った対応を行う前に、国を意識しない「共通の対応」を実施することが効率的かつ有効であることから、「共通の対応」や「共通の論点」などについて整理することを目的として作成されました。

さて、このハンドブックの内容ですが、次の目次となっています。

  1. 基本情報
    1. 著作物とは
    2. 海賊版とは
    3. インターネットを利用した著作権侵害の態様
    4. 著作権侵害に係る法令
  2. インターネット上の海賊版コンテンツへの対応(削除要請)
    1. 海賊版の調査
      1. 侵害調査の概説
      2. 権利行使をしても問題ないコンテンツかの確認
      3. 権利者による対応事例
    2. 削除要請の手順・方法
      1. 運営者に関する情報を検索する(削除要請フォームや電子メールアドレスの記載を探す)
      2. 削除要請の記載内容と送付方法
      3. その他:削除要請における注意点
    3. 代表的なサイトの削除要請窓口と権利保護プログラム等
      1. YouTube
      2. ビリビリ動画
      3. TikTok
      4. Twitter
      5. Facebook
      6. Instagram
      7. App Store
      8. タオバオ・アリババグループ
      9. Shopee
      10. OpenSea
  3. 削除要請以外の権利行使の方法等
    1. 前提
      1. 全体像
      2. 発信者情報開示について
      3. プラットフォーマーの責任について
      4. 独占的ライセンシーによる差止請求権行使の可否
    2. 警告状の送付
      1. 概説(有効な場面、警告状送付で気を付けるべき点等)
      2. 権利者による対応事例
    3. 侵害者の摘発
      1. 概説(摘発の種類、注意点等)
      2. 権利者による対応事例
    4. 侵害者に対する民事訴訟
      1. 概説
      2. 権利者による対応事例
    5. その他の海賊版対策
      1. 啓発
      2. 著作権登録、冒認登録の防止
      3. 契約上の注意点
      4. 海賊版コンテンツへの資金源を断つ
    6. 相談窓口、業界団体等について
      1. 相談窓口
      2. 業界団体・知的財産権保護団体
    7. 海賊版対策における戦略立案
      1. 計画の立案
      2. 監視するプラットフォーム
      3. 人員
      4. 予算
      5. スケジュール
      6. 検証

この目次を見れば分かるように、このハンドブックには、海賊版対策が具体的に記載されています。

これらの目次をみて、自社の状況に合った対応策の記載を読めば具体的な対応策を行うことができるのではないかと思います。

ここで、個人的に特に気になった事項は、「海賊版コンテンツへの資金源を断つ」という項目です。

「漫画村」事件が報道されていた時に、「海賊版コンテンツへの資金源を断つ」ことができれば一番効果的なのではないかと思っていました。

このハンドブックでは、「海賊版コンテンツへの資金源を断つ」の項目に、次のように記載されています。

『イ.広告出稿停止要請
海賊版コンテンツを掲載しているウェブサイトは、ウェブサイト内での広告表示により収入を得ていることも多い。他方、広告主にとっては、海賊版コンテンツが掲載されているウェブサイトに広告を掲載することは、当該ウェブサイトの収入手段に関与しているとの評価も免れないことから信用失墜のリスクがあるといえる。このような場合に、広告代理店、広告主、広告関係団体に対してウェブサイトへの広告の掲載中止を求めることで、ウェブサイト運営者の収入源を断ち、侵害行為継続のインセンティブを削ぐことにつながる。具体的な事例については131 頁のCase1 を参照。』

そして、131頁のCase1では、「広告配信事業者に海賊版サイトへの広告出稿停止を書面で要求した事例(出版)」が記載されてます。

この事例は、海賊版サイトの資金源となっている広告業者に対して警告状を送付することで、資金源を断つという方策を書面要求によって成功した事例です。

必ず上手く行くとは限りませんが、このような方策があるということも頭の片隅に置いておいて損はないと思います。

海賊版対策で頭を悩ませている方は、是非このハンドブックをご覧になることをお勧めいたします。

弊所では、海賊版対策に関するご相談も承っております。
何かありましたら、弊所に是非ご相談ください。

今日は以上です。

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