共同研究契約書を検討する際に役立つ資料13

共同研究契約書を検討する際に役立つ資料13

こんにちは、高田馬場で特許事務所を共同経営しているブランシェの弁理士 高松孝行です。

今回は、ちょっと古い資料になりますが、国際共同研究を行う際に重要になる発明者・発明地の認定に関する資料(国際共同研究における共同発明者・発明地の認定等に関する調査研究報告書)をご紹介します。

日本から世界へ以前のブログでも紹介しましたが、外国の企業や研究機関と共同研究を行う場合には、職務発明に該当するか否かが重要になります。
(職務発明に該当すると、その国の特許法に従う必要があるからです。)

そして、その職務発明か否かの前に、共同発明者に該当するか否かや発明地の認定等が重要になります。
(そもそも共同発明者にならなければ、その国の職務発明制度を検討する必要がないからです。)

今回ご紹介する資料は、その共同発明者に該当するか否かと発明地の認定等についてまとめられたものです。
(財産法人知的財産研究所〔現一般財団法人知的財産研究教育財団〕がまとめたものですので、信頼性は高いと思います。)

さて、この資料の内容ですが、次の国における共同発明者の認定および発明地の認定等が解説されています。

(1)日本
(2)米国
(3)ドイツ
(4)イギリス
(5)フランス
(6)中国
(7)韓国

そして、日本の研究者が各国に本拠地がある企業等と国際共同研究を行った場合に、発明地の認定、第1国出願義務および外国出願許可に関して、次のような留意すべき事項があると記載されています。

(1)日本と米国の場合
米国において発明の着想及び実施化の行為がなされたか否かに留意しなければならない。従属するクレームにのみ貢献した発明者も共同発明者となることを勘案すると、従属するクレームについても、米国で着想及び実施化されたか否か留意すべきである。
米国において発明が完成されていると判断した場合は、米国の外国出願許可証発行の申請を行ない、その許可証が発行された後に米国以外の国へ出願するか、米国特許商標庁へ特許出願を行い、6か月経過の後に、米国以外の国へ出願するべきであろう。

(2)日本とドイツの場合
発明が国家機密の性質を有するか否かに留意しなければならない。特に、この国家機密には、兵器技術はもちろんのこと、暗号法及び原子力発電技術も含まれることに留意しなければならない。
この国家機密の性質を有する場合には、以下の方法によりドイツ以外の国へ出願すべきであることに留意しなければならない。
・ ドイツ国防省へ外国出願許可を申請し、書面による同意を得た後、外国出願を行う。
・ 欧州特許出願を行う。この出願について、出願が国家機密を含み得ることを示す添付書類とともに、ドイツ特許商標庁へ手続を行う。
・ PCTに基づき、ドイツ特許商標庁を受理官庁として国際特許出願を行う。
なお、ドイツの外国出願許可制度の規定は、発明が上記国家機密の性質を有する性質のものである場合に適用され、その発明がドイツで行われ又は完成されたか否かは要件となっていないことに留意しなければならない。

(3)日本とイギリスの場合
出願が軍事技術に関する情報、安全保障に害を及ぼすおそれのある情報又は公共の安寧に害を及ぼすおそれのある情報を含むか否かに留意しなければならない。
この情報を含む出願であって、外国へ出願する場合は、特許庁長官による外国に出願する許可を受けた後に出願するか、イギリス特許庁へ出願した後、6週間経過した後に出願しなければならないことに留意しなければならない。
なお、イギリスの外国出願許可制度の規定は、出願に軍事技術に関する情報、安全保障に害を及ぼすおそれのある情報又は公共の安寧に害を及ぼすおそれのある情報を含む場合に適用され、その発明がイギリスで行われ、又は完成されたか否かは要件となっていないことに留意しなければならない。

(4)日本とフランスの場合
欧州特許出願を行う場合、出願人がその居所又は営業所をフランスにおいている場合、当該出願人は最初の出願として欧州特許出願を出願することができるが、この欧州特許出願はフランスにおいて出願されなければならないことに留意すべきである。
PCT出願については、出願人がその居所又は営業所をフランスに有する場合は、受理官庁であるフランス特許庁へ出願しなければならず、かつ、フランスにおける先の出願に基づく優先権を主張して行わなければならないことに留意すべきである。
発明者が、フランス国籍を有する者又はフランスに日常の居所を有する者である場合にも、上述の事項を遵守しなければならない。

(5)日本と中国の場合
第1国出願義務の規定については、見解が分かれていることに留意すべきである。
特許出願前の発明創造などに対する権利を日本企業が取得した場合には、その制度の適用はないとする見解に立てば、研究委託契約又は特許出願前の譲渡契約により中国で完成した発明に基づく特許を受ける権利を、すべて、中国の国籍を有さない者、中国以外の法人などに移転させることに留意すべきである。
第1国出願義務の規定は、中国内で完成された発明に係る特許を受ける権利を有する者すべてに課せられているという見解に立てば、まず、中国内で発明が完成しているか否かに留意すべきである。中国内で発明が完成している場合には、中国の特許庁に出願するか、PCTに基づく国際出願を、中国特許庁を受理官庁として手続を行ない、その後に中国以外の国へ出願又は国内段階へ移行することに留意すべきである。

(6)日本と韓国の場合
原則、自由にどの国へも出願できる。例外として、韓国政府が国防上必要な発明に対し外国への出願を禁止するか又は出願人などにその発明を秘密に取り扱うように命じられた場合のみ、韓国政府の許可を得た後に、韓国以外の国へ外国特許出願できることに留意しなければならない。

なお、詳細はこの資料で確認してください。

少し古くなってしまった情報ですが、共同発明者や発明地に関する規定は、それほど変わるものではありませんので、今でも十分な価値がある資料だと思います。

上記の国の企業等と国際共同研究を考える場合には、その国の部分だけでも読んでみてください!

なお、共同研究契約等に不安がある方は、弊所にご相談ください。

今日は以上です。

追記:資料の保存場所が変更になったので、それに合わせてリンク先を変更(2018/8/5)

この記事を書いた人

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