「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」が改訂されました(2018)

「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」が改訂されました(2018)

こんにちは、高田馬場で特許事務所を共同経営しているブランシェの弁理士 高松孝行です。

電子商取引及び情報財取引等に関する準則 表紙
引用:電子商取引及び情報財取引等に関する準則

昨年に引き続き、「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」が改訂されましたので、今回はそれについて書きます。

電子商取引及び情報財取引等に関する準則(平成30年7月)はこちら

今年度の改訂版では、主に次の点について改訂されました。

  1. AIスピーカーを利用した電子商取引(新規)
  2. ブロックチェーン技術を用いた価値移転(新規)
  3. 国境を越えた取引に関する製品安全関係法の適用範囲(新規)
  4. 自動継続条項と消費者契約法第10条等
  5. 特定商取引法による通信販売に係る広告規制

1.のAIスピーカーを利用した電子商取引とは、Google Home等の対話型の音声操作に対応した AI クラウドに接続することで、情報検索や 音楽再生等の操作が可能なスピーカー(スマートスピーカー)を利用した商取引のことです。

この商取引の論点としては、①AIスピーカーが音声を誤認識した場合と、②AIスピーカーに対して発注者が言い間違いをした場合について検討されています。

詳細は、上述した準則をご覧になって欲しいのですが、①の場合の法律関係は、「事業者の提供する AI スピーカーが、例えばテレビの音声や子供の声を誤認識して発注処理をした場合、発注者による発注の意思表示と解釈できる行為がないので、当該注文による契約はそもそも成立していない」と説明されています。

なお、このような法解釈において、事業者が取り得る対策についても検討されていますので、AIスピーカーを利用した電子商取引をしようと考えている企業の方は対策についても是非読んでみてください。

また、②の場合の法律関係は、「発注者の言い間違いは表示上の錯誤であり、売買の目的物は売買契約の重要な要素であるから、これに関する錯誤は法律行為の要素の錯誤として民法第95条本文により無効とな る。但し、発注者に重過失がある場合には、民法第95条ただし書により、発注者から錯誤を主張することはできない(なお、AI スピーカーによる発注には、電子契約法の適用はない。)。」と説明されています。

次に、2.のブロックチェーン技術を用いた価値移転については、「当事者間が、①ブロックチェーン上で管理される財産的価値(トークンや仮想通貨等)を現金で買い受ける旨の契約、②トークン等を対価として物、サービスを提供する契約など、トークン等の移転を内容とする旨の契約を締結した場合、当該契約の効力として、当該トークンの移転を請求することができる。」と説明されています。

トークンや仮想通貨等は、「はあくまでブロックチェーンの参加者が共通のコンセンサスの下、ブロックチェーンを利用したルール(ブロックチェーンの仕組み)に従うことを前提に事実上価値が付与され、決済の道具として用いられているものにすぎない」とバッサリと判断されていますので、トークンや仮想通貨等を取り扱うビジネスを考えている方は留意が必要です。

3.の国境を越えた取引に関する製品安全関係法の適用範囲に関して、「日本国内において製品安全関係法における技術基準に適合した製品であることを示すPSマーク(PSEマークやPSCマーク)の表示がない製品を流通させる行為は、海外事業者によるものであっても、同法の適用対象となる」と説明されています。

したがって、海外事業者の製品を取り扱っている企業は注意が必要です。

また、「国内の販売事業者が製品を輸出する場合には、原則として同法の適用対象とならない。ただし、輸出先の海外事業者が日本国内に向けて流通させることを知って、当該海外事業者に製品を販売する場合には、同法の適用対象となる。」と説明されています。

したがって、逆輸入のような取引を扱っている企業も注意が必要です。

4.の自動継続条項と消費者契約法第10条等については、健康食品のネット販売で問題になっているもので、いくつかの場合分けを行って、消費者契約法第10条の各要件に該当するか否かが説明されています。

ネット販売で、自動継続条項を契約に定めている企業や定めようとしている企業の方は必ず目を通しておいてください。

5.の特定商取引法による通信販売に係る広告規制については、「ウェブ上で商品の販売等を行う事業者は、同法の広告規制に従って、(1)商品の販売条件等について広告するときは一定事項を表示しなければならず(同法第11条)、また、(2)誇 大広告等が禁止されている(同法第12条)ほか、(3)承諾をしていない者に対する電子メール広告・ファクシミリ広告の提供が禁止されている(同法第12条の3、第12条の5)。 なお、事業者が他の者に電子メール広告に関する業務を一括して委託しているときは、受 託事業者についても、承諾をしていない者に対する電子メール広告の提供が禁止されることとなる(同法第12条の4)」と説明されています。

ネット通販を行っている企業や行おうとしている企業の方は必ず目を通しておいてください。

以上、簡単に改正点を説明しましたが、詳細は必ず電子商取引及び情報財取引等に関する準則で確認してください。

この資料には、裁判にならないとなかなかテーマとならないものまできちんと解説していますので、実務上は大変役立つと思います。

改訂されるにつれて分量も多くなってきているので、すべてを読むことは大変ですが、電子商取引に関連する契約に携わる人にとって重要な資料ですので、是非一度目を通してください!

弊所では、この準則で解説されている事項に関するご相談も承っております。
何かありましたら、弊所に是非ご相談ください。

今日は以上です。

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