「製造業者のノウハウ・知的財産権を対象とした優越的地位の濫用行為等に関する実態調査報告書」が公表されました

こんにちは、高田馬場で特許事務所を共同経営しているブランシェの弁理士 高松孝行です。

製造業者のノウハウ・知的財産権を対象とした優越的地位の濫用行為等に関する実態調査報告書の表紙

引用:製造業者のノウハウ・知的財産権を対象とした優越的地位の濫用行為等に関する実態調査報告書

令和元年(2019年)6月に、公正取引委員会から「製造業者のノウハウ・知的財産権を対象とした優越的地位の濫用行為等に関する実態調査報告書」が公表されましたので、今回はこれについて書きます。

「製造業者のノウハウ・知的財産権を対象とした優越的地位の濫用行為等に関する実態調査報告書」はこちら

この報告書は、有識者から公正取引委員会に対して「優越的な地位にある事業者が取引先の製造業者からノウハウや知的財産権を不当に吸い上げている」といった指摘が複数寄せられていることを踏まえて、実態調査を行った上で作成されました。

さて、この報告書の内容ですが、次のような目次となっています。

  1. 第1 調査の経緯・趣旨
  2. 第2 調査方法
    1. 書面調査
      1. 発送日
      2. 発送数
      3. 回収数
      4. 業種別の発送数
      5. 報告対象期間
    2. ヒアリング調査
  3. 第3 我が国における特許出願動向等
    1. 近年の特許出願状況
    2. 我が国における大企業・中小企業の割合と企業規模別の特許出願状況
  4. 第4 契約時のチェック体制・不安感等
    1. ノウハウ・知的財産権に係る取扱いを確認する担当者等の有無
    2. 契約締結時における不安の有無
  5. 第5 製造業者から報告された事例
    1. 報告件数
    2. 報告された事例の分類
    3. 取引先の要請を受け入れた理由
    4. 取引先の要請を受け入れた時点における取引年数と取引依存度
    5. 製造業者に生じた不利益
    6. 参考事例集(今回の調査で報告された事例)
      1. 01 秘密保持契約・目的外使用禁止契約無しでの取引を強要される
      2. 02 営業秘密であるノウハウの開示等を強要される
        1. 秘密としている技術資料等を開示させられる
        2. 発注内容にない金型設計図面等を無償で提供させられる
        3. 一方的な工場見学や工場内撮影を強要される
      3. 03 ノウハウが含まれる設計図面等を買いたたかれる
      4. 04 無償の技術指導・試作品製造等を強要される
        1. 競合他社に熟練工の特殊技術を無償で供与させられる
        2. 継続取引の中での無償の試作品製造(実験等)を要請される
      5. 05 著しく均衡を失した名ばかりの共同研究開発契約の締結を強いられる
      6. 06 出願に干渉される
        1. 出願内容の報告・修正を強いられる
        2. 単独発明であっても,取引先と共同出願にさせられる
      7. 07 知的財産権の無償譲渡・無償ライセンス等を強要される
        1. 知的財産権の無償譲渡等を強要される
        2. 知的財産権の無償ライセンス等を強要される
        3. 最恵待遇でのライセンスを一方的に義務付けられる
      8. 08 知財訴訟等のリスクを転嫁される
    7. 第6 今回の調査結果に対する評価と対応
      1. 評価
      2. 公正取引委員会の対応
    8. 参考資料1 「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(抄)」
    9. 参考資料2 「優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」
    10. 参考資料3 「下請代金支払遅延等防止法」
    11. 参考資料4 「日本標準産業分類 大分類E 製造業」

この報告書によると、書面調査に対して15,875社から回答があり、そのうちの製造業者641社(大企業160社、中小企業480社、資本金額無回答1社)から合計726件の事例報告がありました。

製造業者のノウハウ・知的財産権を対象とした優越的地位の濫用行為等に関する実態調査報告書の概要

引用:製造業者のノウハウ・知的財産権を対象とした優越的地位の濫用行為等に関する実態調査報告書の概要

個人的には、結構多くの事例が報告されていると思いました。

各事例の詳細は報告書を読んでいただければと思いますが、目次にある通り、独占禁止法上の問題となるような30事例が報告されています。

この調査結果を踏まえて、公正取引委員会は、次のような対応をすると記載しています。

  • 独占禁止法及び下請法上問題となり得る行為を未然に防止する観点から、本調査結果を公表するとともに、経済産業省及び特許庁と連携し、製造業全体に対して本報告書を周知する
  • 今後とも、製造業者のノウハウ・知的財産権を対象とした優越的地位の濫用行為等についての情報収集に努めるとともに、違反行為に対して厳正に対処していく(下請法違反行為については、共同して下請法を運用している中小企業庁と連携して厳正に対処していく)

この報告書に記載されているようなことを慣例等で行っていた企業は、早急に契約書のひな形等を修正した方がよいと思います。

一方、この報告書に記載されているようなことを要求された企業は、独占禁止法違反(優越的地位の濫用)に該当する可能性があるとして、契約書の条項の修正を求める交渉をした方がよいと思います。

競争力の源泉であるノウハウや知的財産を不当に取り扱われることは企業の生死につながる可能性もあります。
是非交渉してください!

弊所では、独占禁止法に関するご相談や、契約交渉代理や契約書作成支援等も承っております。
何かありましたら、弊所に是非ご相談ください。

今日は以上です。