「スタートアップとの事業連携及びスタートアップへの出資に関する指針」が公表されています!

こんにちは、高田馬場で特許事務所を共同経営しているブランシェの弁理士 高松孝行です。

2022年3月31日に、経済産業省と公正取引委員会が共同で作成した「スタートアップとの事業連携及びスタートアップへの出資に関する指針」が公表されましたので、今回はそれについて書きます。

スタートアップとの事業連携及びスタートアップへの出資に関する指針 表紙
引用:スタートアップとの事業連携及びスタートアップへの出資に関する指針

「スタートアップとの事業連携及びスタートアップへの出資に関する指針」はこちら

この指針は、スタートアップと連携事業者との間であるべき契約の姿・考え方を示すことを目的として作成されました。

さて、この指針の内容ですが、次のような目次となっています。

  1. スタートアップとの事業連携及びスタートアップへの出資に関する指針の必要性と構成
    1. 本指針の必要性
    2. 本指針の構成
  2. スタートアップとの事業連携に関する指針
    1. NDA(秘密保持契約)
      1. NDAの概要
      2. NDAに係る問題について
        1. 営業秘密の開示
        2. 片務的なNDA等の締結
        3. NDA違反
    2. PoC(技術検証)契約
      1. PoC契約の概要
      2. PoC契約に係る問題について
        1. 無償作業等
    3. 共同研究契約
      1. 共同研究契約の概要
      2. 共同研究契約に係る問題について
        1. 知的財産権の一方的帰属
        2. 名ばかりの共同研究
        3. 成果物利用の制限
    4. ライセンス契約
      1. ライセンス契約の概要
      2. ライセンス契約に係る問題について
        1. ライセンスの無償提供
        2. 特許出願の制限
        3. 販売先の制限
    5. その他(契約全体等)に係る問題について
      1. 顧客情報の提供
      2. 報酬の減額・支払遅延
      3. 損害賠償責任の一方的負担
      4. 取引先の制限
      5. 最恵待遇条件
  3. スタートアップへの出資に関する指針
    1. 出資契約の概要
    2. 出資契約に係る問題について
      1. 営業秘密の開示
      2. NDA違反
      3. 無償作業
      4. 出資者が第三者に委託した業務の費用負担
      5. 不要な商品・役務の購入
      6. 株式の買取請求権
        1. 買取請求権を背景とした不利益な要請
        2. 著しく高額な価額での買取請求が可能な買取請求権の設定
        3. 行使条件を満たさない買取請求権の行使
        4. 個人への買取請求が可能な買取請求権
      7. 研究開発活動の制限
      8. 取引先の制限
      9. 再恵待遇条件
  4. 参考資料

この目次を見てわかるように、この指針にには、スタートアップとの事業連携する際に必要となる一連の契約および出資に関する情報が記載されています。

そして、各契約等における独占禁止法上の考え方が解説されています。

例えば、共同研究契約の「名ばかり共同研究」には、独占禁止法状の考え方として次のように記載されています。

「共同研究の大部分がスタートアップによって行われたにもかかわらず、その貢献度を超えて、共同研究の成果に基づく知的財産権を連携事業者のみ又は双方に帰属させる場合には、スタートアップは貢献に見合った成果を享受できず、連携事業者は貢献を超えた成果を享受することとなる。
 取引上の地位がスタートアップに優越している連携事業者が、知的財産権が事業連携において連携事業者に帰属することとなっており、貢献度に見合ったその対価がスタートアップへの当該知的財産権に係る支払以外の支払に反映されているなどの正当な理由がないのに、取引の相手方であるスタートアップに対し、共同研究の成果の全部又は一部の無償提供等を要請する場合であって、当該スタートアップが、共同研究契約が打ち切られるなどの今後の取引に与える影響等を懸念してそれを受け入れざるを得ない場合には、正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることとなるおそれがあり、優越的地位の濫用(独占禁止法第2条第9項第5号)として問題となるおそれがある。」

このように、どのような場合に、独占禁止法に抵触するかについて判断基準が明示されています。
(なお、具体的な条項例は記載されていませんが、対応する条項が記載されている資料名が明示されています。)

ただ、この指針の記載だけでは、具体的に独占禁止法に抵触するか判断できないことも多いと思いますが、ある程度の指針が記載されているだけでも役立つと思います。

近年、スタートアップエコシステムが形成されつつある状況において、この指針は非常に役立つものだと思います。

今後、スタートアップと事業提携を考えている企業の方は、この指針を読んで、少なくとも明らかに独占禁止法に抵触すると考えられるような条項が含まれた契約や、行為を行わないようにしましょう!

弊所では、秘密保持契約、情報開示契約、共同研究契約、ライセンス契約等の知的財産に関する契約のご相談も承っております。
何かありましたら、弊所に是非ご相談ください。

今日は以上です。

この記事を書いた人

branche-ip