種苗法の改正について

こんにちは、高田馬場で特許事務所を共同経営しているブランシェの弁理士 高松孝行です。

今回の種苗法の改正は、見送りになりました。

このブログで種苗法関連の裁判例(裁判例1裁判例2裁判例3)等を書いていますが、今年(2020年)は種苗法の改正が予定されているので、今回はそれについて書きます。

改正種苗法案に関する資料はこちら

さて、今回の法改正では、主に次のような点が改正される予定です。

  1. 育成者権者の意思に応じて海外流出防止等ができるようにするための措置
    1. 育成者権が及ばない範囲の特例の創設
      1. 登録品種の種苗等が譲渡された後でも、当該種苗等を育成者の意図しない国へ輸 出する行為や意図しない地域で栽培する行為について、育成者権を及ぼせるよう 特例を設ける。
      2. 輸出・栽培地域に係る制限の内容は農水省HPで公表し、登録品種である旨及び制 限がある旨の表示も義務付ける
    2. 自家増殖の見直し
    3. 質の高い品種登録審査を実施するための措置
  2. 育成者権を活用しやすくするための措置
    1. 品種登録簿に記載された特性(特性表)と被疑侵害品種の特性を比較することで 両者の特性が同一であることを推定する制度を設け、侵害立証を行いやすくする。
    2. 育成者が特性表の補正を請求できる制度、裁判での証拠等に活用できるよう育成 者権が及ぶ品種か否かを農林水産大臣が判定する制度を設ける。
  3. その他
    1. 職務育成品種規定の充実
    2. 外国人の権利享有規 定の明確化
    3. 在外者の代理人の必置化
    4. 通常 利用権の対抗制度
    5. 裁判官が証拠書類提出命令を出す際の証拠書 類閲覧手続の拡充
    6. 指定種苗制度について、指定種苗の販売時の表示のあり方を明確化

詳細は、改正法律案をご覧になっていただくこととして、今回の法改正の注目点は「自家増殖の見直し」の部分ではないかと思います。

主な登録品種と一般品種の例

引用:農林水産省HP

しかし、私が今回の改正で最も注目する点は、「品種登録簿に記載された特性(特性表)と被疑侵害品種の特性を比較することで 両者の特性が同一であることを推定する制度を設け、侵害立証を行いやすくする。」というものです。

私は以前、土肥一史先生古稀記念論文集『知的財産法のモルゲンロート』に「種苗法における登録品種と育成者権の権利範囲との関係に関する一考察」というタイトルで、種苗法に関する論文を寄稿しました。

実はこの論文の中で、「登録品種の特性表に記載された特性は,前述したように,行政機関が費用と時間をかけて公平に審査した上で認定したものである。そこで,登録品種は,登録されると,出願審査の際に提供された直物体自体(現物)から離れ,特性表に記載された特性のみを有する「抽象的な品種」(特性表に記載されていないあらゆる特性を有する品種とも考えられる)とする。したがって,育成者権侵害訴訟において,育成権者は,侵害被疑品種が特性表に記載された特性を有することを主張し,それを立証することができれば,侵害被疑品種は形式的に育成者権を侵害すると推定する。」(P182-P183)と記載していました。

このような考えが、今回の法改正によって種苗法に取り入れられることになります!

もちろん、私の論文を参考に法改正が行われたということではないと思いますが、私が以前から主張していた事項が、種苗法に実際に入ることは、私の考えがそれほど間違っていなかったということの証明にもなるので、とても嬉しいです。

種苗法を研究している人はあまりいないので、今後も種苗法を研究して行きたいと思います。

弊所では、品種登録出願から権利行使・ライセンス契約等の種苗法に関するご相談も承っております。
種苗法について何かありましたら、遠慮なくお問い合わせください。

今日は以上です。

※法改正が見送られた点を加筆すると共に、改正法に関する資料へのリンクを削除(2020/7/11)