「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」が改訂されました(2020)

こんにちは、高田馬場で特許事務所を共同経営しているブランシェの弁理士 高松孝行です。

電子商取引及び情報財取引等に関する準則(令和2年8月)の表紙

引用:電子商取引及び情報財取引等に関する準則(令和2年8月)

昨年のブログに、今年(2020年)4月1日に施行された改正民法を踏まえた「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」の改訂作業が行われていると書きましたが、その作業が終了して、改正民法を考慮した「電子商取引及び情報財取引等に関する準則(令和2年8月)」が公表されましたので、今回はそれについて書きます。

「電子商取引及び情報財取引等に関する準則(令和2年8月)」はこちら

さて、今回の改訂ですが、上述したように、改正民法を考慮しているため、次のような大規模な改訂が行われました。

  • 民法(債権法)改正に伴う所要の見直し
    • 意思表示の効力発生時期関係
      • Ⅰ-1-1 契約の成立時期等
    • 錯誤関係
      • Ⅰ-1-2 消費者の操作ミスによる錯誤
      • Ⅰ-1-3 ワンクリック請求と契約の履行義務
      • Ⅰ-2-4 価格誤表示と表意者の法的責任(旧Ⅰ-2-2)
      • Ⅰ-8-2 取引当事者間の法的関係(旧Ⅰ-7-2)
      • Ⅰ-11-2 AIスピーカーに対して発注者が言い間違いをした場合(旧Ⅰ-10-2)等
    • 定型約款関係
      • Ⅰ-2-1-1 利用規約の定型約款としての契約への組入れ(新規)
      • Ⅰ-2-1-2 定型約款となる利用規約の開示(新規)
      • Ⅰ-2-1-3 定型約款となる利用規約の契約締結後の変更(新規)
      • Ⅰ-2-2 事業者間契約と定型約款(新規)
      • Ⅰ-2-3 定型約款の規定が適用されない利用規約の契約への組入れと契約締結後の規約変更(旧Ⅰ-2-1)等
    • 売主の担保責任関係
      • Ⅰ-8-2 取引当事者間の法的関係(旧Ⅰ-7-2)
      • Ⅰ-8-4 「ノークレーム・ノーリターン」特約の効力(旧Ⅰ-7-4)
      • Ⅲ-5 ソフトウェアの契約不適合責任
    • 原状回復義務関係
      • Ⅲ-4 ライセンス契約終了時におけるユーザーが負う義務の内容(旧Ⅲ-4-1)
      • Ⅲ-12-2 デジタルコンテンツ利用契約終了後のデジタルコンテンツの利用等
  • 設問の新設、見直し、削除
    • 旧Ⅰ-3-3
      なりすましを生じた場合の認証機関の責任(削除)
    • Ⅰ-8-3
      インターネット・オークション及びフリマサービスにおける売買契約の成立時期(旧Ⅰ-7-3。設問の対象にいわゆるオンラインフリーマーケットサービスを追加)
    • Ⅲ-1-3
      重要事項不提供の効果(設例をパッケージソフトウェアの購入からオンラインでのダウンロード購入に変更)
    • 旧Ⅲ-4-2
      契約終了の担保措置の効力(削除。Ⅲ-12-2に統合)
      Ⅳ-4
    • インターネット上の国境を越えた名誉・信用の毀損、プライバシー侵害(旧Ⅳ-4-1と旧Ⅳ-4-2を統合)
    • Ⅳ-5
      インターネット上の国境を越えた著作権侵害(新規)
    • Ⅳ-8
      国境を越えた取引に関する公法規制の適用範囲(旧Ⅳ-7。設問の対象を製品安全法を中心とする公法規制に変更)等

このように多くの項目が改訂されています。

例えば、「Ⅲ-4 ライセンス契約終了時におけるユーザーが負う義務の内容」では、次の3つの場合について、その考え方を示しています。

  • ライセンス契約解除のユーザーの義務(原状回復)
  • ライセンス契約不成立の場合等のユーザーの義務(不当利得返還・原状回復)
  • ライセンス契約の満了時のユーザーの義務(契約による)

詳細は、この準則をご覧いただくとして、契約で別途取り扱いを規定している場合等を除き、「ベンダーはユーザーに対して情報財を消去するよう求めることができると解するのが合理的である」と記載されています。

理由としては、「ライセンス契約解除時の民法第545条第1項本文の原状回復義務として、ユーザーは情報財の使用を停止しなくてはならず、これを担保するために、ベンダーはユーザーに対して、当該情報財を全て消去(削除)するよう求めることができると解するのが合理的である」とし、著作権法第47条の3第2項の趣旨と合致するからと説明されています。

このように、実務で問題となるような論点に関し、この準則には、理由を含めて、その考え方が簡潔に記載されています。

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ただし、この準則もあくまで一つの解釈を示すものであって判例ではありませんので、判例によって解釈が変更になる可能性があることに留意してください。

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何かありましたら、弊所に是非ご相談ください。

今日は以上です。